今もかつての面影が残る初瀬街道沿いに建つ住まいの増改築とギャラリーの計画。
明治時代の母屋に、大正・昭和に建てられた離れや茶室が残り、様々な時代につくられた空間が敷地内に同居していた。この計画では、全体の調和を図るとともに現代性を表現したいと考えた。街道に面するギャラリーは母屋のファサードの格子を尊重しながら外壁をフロストガラスとして平成時代の“いま”を表現した。また母屋の煙抜きに呼応してギャラリー上部は六角形の棟を設けた。建物の玄関は母屋とギャラリーの間に設け、床の土間には施主の知り合いの陶芸作家にお願いして陶片を埋めた。ギャラリーに入るとフロストガラス越しの柔らかい光とハイサイドライトの明かりが降り注ぐ。ここで年数回の企画展が行われ、地域で活動する芸術家たちの交流の場となっている。ギャラリーの中庭にある古井戸はこの場が芸術家たちの“発想の泉”となることを願ってそのまま残している。